2009年12月10日木曜日

木造住宅:壁量の根拠

建築基準法では木造軸組計算を。構造の知識がなくても簡単に求めることができるようにしてあります。しかしながら、その事が災いし、建築士でもその内容についての理解がない事が多くあります。その典型がこれ。
木造壁量計算は、
□重い建物(cm/㎡)の場合
平屋:15
 2階建の1階 33
 2階建の2階 21
□軽い建物(cm/㎡)の場合
 2階建の1階 29
 2階建の2階 15
という数値を面積にかけ、この数値を超える壁量を確保することになっていますが、この数字はどの様に算出されているのでしょうか?
当事務所で多く設計する、重い屋根、2階建 の場合で検証してみます。
簡単にそれぞれの変数(パラメータ)を列挙すると、
固定荷重(建物本体:屋根、床、壁):各部積算による
(屋根=900N/㎡、床=500N/㎡、壁=600N/㎡)
積載荷重(家具、人など):600N/㎡(地震算定用/基準法より)
地震層せん断力係数=0.2 ※キモの数字。この数字が決定的。数字の根拠は「経験値」らしいです。つまり、地震力は垂直荷重の0.2ガケでよい。という事になっています。
地震力分布係数(Ai)=1.4(木造2階建の場合 建物高さにより、おもりの高さを概算する。上が重いほど数値が大きくなる。Ai=1+(1/√ai-ai)×(2T/1+3T))
地震力=地震層せん断力係数×地震力分布係数×重さ
2階地震力=0.2×1.4×(1.3×0.9+0.6/2{庇は1.3倍、壁は2階部分})=0.41
壁倍率は1.96としているので、
0.41/1.96=0.21m/㎡→21cm/㎡
1階地震=0.2×1.0×(1.47+1.7)=0.63
0.63/1.96=0.32→3.3m/㎡→33cm/㎡
ということで、21及び33という数字になりました。
壁倍率2.5の構造用合板は、1.96×2.5=4.9kN→約500kgtの力(重さ)に耐える という事や、各数字の概ねの大きさが、体感的に理解できる という事で、この事はとても大きいと思います。何事も体で覚えることが一番です。
これって分かっている建築士ってほとんどいないと思います。自分も実際やってみて初めて解ったのですから・・・・・。次は風圧力です。

2009年12月2日水曜日

住宅性能:1.構造の安定 1-1、2 耐震等級

住宅性能の内、構造の安定は最も重視しなくてはならない項目です。この項目は多岐に渡り、専門的で~センターのマニュアルだけでない、様々な専門書が存在し複雑ですが、一つ一つ当社の考え方を分かりやすく書き記そうと思っています。
まとめて後日掲載したいと思います・・・・。すみません。時間が足りない・・・・。

2009年11月19日木曜日

演出 ということ


最近「演出」という事に興味が出てきています。
 上の絵は、本屋で見て何となく引っかかっていたものですが、自分はどう考えても、左側の人間(理系)。頭ボサボサで着る服などにはまるで頓着せず、本質ばかりに夢中になって他の体裁を考えないタイプ。右側(文系)の人間の事を、『外面ばかり気にする人間は、中身がカラッポな証拠』とレッテルを貼り、『男は中身の本質で勝負』とばかり思っていました。まあ、これって間違っていないと思うのですが、なにも知らない人が見たらどうなのか?という事を気にしていませんでした。
 世の中には、概ね外見でしかものを観ない人も多いこと、情報過多の時代になり、情報に飲まれ何が本質なのか解らなくなっている時代・・・益々その事が顕著になっている気がします。一見スタイリッシュに見える、『生活感のない』住宅・・・・・住宅は、正に人がその中で『生活』するためのものなのに、『生活感のない住宅』がもてはやされる時代って いったい・・・・・。
 本質とイメージが乖離し真逆となってしまった時代・・・。このおかしな時代に突入した今、自分はどの様に振る舞えば良いか・・・・。ただ単に反発するのではなく、より良い方向に向かうために・・・。
 様々なニーズに応える様、多くの皆様に理解して頂ける様に、様々な事を実践し、そのアイデア、技術を公開して行きます。大きくイメージが膨らむ様に・・・。

2009年11月16日月曜日

建具工場視察


知り合いの建具屋さんの工場を見学に。造る過程を見学する事で、何かしら新しいアイデアを出すためのサーベイ。正に百聞は一見にしかずで、様々なアイデアが出てきました。色々な工作機械は、全て直角を出すのに適しているというか、きれいに直角に作動する様は、観ていて小気味良い感じです。なるほどこれなら直角が出せるというメカニズムを体感し、上手に設計に応用しようと思いました。日本人はきれいにプレーナ処理された白木が好き。

2009年11月6日金曜日

住宅電気料金

オール電化の住宅を設計すると、いつも東京電力の電気契約メニューに惑わされます。
基本は大きく分けて4種類あり、ライフスタイルにより選べる様になっていますが、使い方で料金に差が出ます。ちなみに我が家は『電化上手』。全電化住宅割引もプラスされお得な気がしますが、どっこい結構かかる場合があります。基本的な説明は東電の御案内資料を観て頂ければ概ね解るのですが、引っかかるのは、通電制御型夜間蓄熱式機器の割引と基本料金。特に基本料金は契約容量により替わり、概ね電気業者に任せると(過大に)大きく契約されてしまい、過大な基本料金を払わされる結果となる様で、事前に多くの打ち合わせをしたのに、実は我が家もその口となってしまっています。ライフスタイルが解らない電気業者側に罪がある訳ではありませんが、電気容量を多めに見積もる(安全側)事は、今や真逆の世の中になっている事を、業者さん側も理解してほしいものです。ちなみに我が家は17KVAという結構な大きさの契約となっていますが、検討の結果、10KVAでもいけると思われますので、最大約2000円/月程基本料金が下げられそうです。設備関係は非常に込み入っており、専門技術者でないと解らない事が多く、日々勉強の毎日です。様々な所を安全側でなく、節約側に変更する時代・・・。小さな事かもしれませんが、ひとつひとつが大切な設計ノウハウです。

2009年11月4日水曜日

ソーラーウオール

ソーラーウオール。南西側が道路に面するため、開口部が設けられず、試行錯誤の結果、ソーラーウオール設置としました。意匠的に強化ガラスを屋根上にはみ出させる様にし、ガラスの存在感を華麗に演出しています。画期的効果を今冬御体験下さい。

2009年11月2日月曜日

T邸 竣工


漸く引渡が終了し、T邸が竣工しました。

建主様、施工関係者の方々、大変ありがとうございました。
近々に写真を整理し、UPしたいと思います。

2009年10月30日金曜日

ディテール:ちひろ美術館02


同じくちひろ美術館 長野。
内部巾木の納まりです。床:地元産カラ松板 と 壁:たぶんフッコー系土壁掻き落とし仕上げとの接線(巾木)に、先付けされたスチールの入巾木がきれいに納まっています。コーナーも面取りされ、上部はすこしめくれた様に加工されていて、土壁がうまくおさまる様に工夫されています。
ディテールは建築にとって極めて重要な本質である事は承知していながら、コストとのせめぎ合いで常に切り捨てられ、いつしかそれが思考さえされなくなりつつある、自分の今の設計スタイルを修正し、新たな地平へのスタートを誓います。

ディテール:ちひろ美術館


長野いわさきちひろ美術館 設計:内藤廣先生
外部鉄骨柱の柱脚部:柱は等辺山形鋼をフラットバーを挟んでシンプルに4つ組み合わせた、ミースのバルセロナパビリオン状形状です。柱を単に丸石洗い出しコンクリート平板に埋め込むのではなく、側溝と組み合わせ、丸い砂利で覆うことにより、固いもの同士が柔らかく自然に接続される様工夫しています。砂利部は柱部分にあるので歩行にじゃまにならず、側溝としての水はけも良い、とても美しい納まりです。

2009年10月27日火曜日

材料研究:古材利用


正田ギャラリー内部の様子。設計・監理:正田 亨 氏
なぜ、人は古材に魅力を感じるのか?汚れ傷つき、ササクレだった材料を、丁寧に清掃し組み直す事で、物質は蘇る。この『気持ちの変化』現象は木材に限らず、エコロジーの本質に迫る人間の面白い特性である。組み直す行為は手間がかかり、結果費用がかさむ事になるが、この辺がうまく解決出来れば地域景観と絡めて、新たな産業として芽吹くことが出来るかもしれない。構造材ではない所から徐々に始めてみよう。と思っています。

2009年10月22日木曜日

材料研究:建具 無双窓


無双窓:幅のある縦格子2枚を組み合わせ、左右に動かす事で開閉を自在にした窓付扉の事。店舗で実施した例です。上下2段に組み込み、中の見せ方を変えられる装置です。材料はピーラ(松)を使い、丁寧に施工頂きました。建具全体は吊り戸とし、床にレールが出ず、大変軽くスムースに動きます。

2009年10月21日水曜日

T邸 内部壁


内部壁は概ね『下地仕上げ』になっています。構造用合板と柱・間柱が表しとなるので、各構造材はプレーナー仕上げとし、印刷面を外部側にする等、色々注意しながらの施工となります。建主の『にせもので隠す』事をやめ、物質そのものを表したい。というある意味哲学的な思考の結果の意匠です。

2009年10月20日火曜日

T邸 外構フェンス工事


漸く足場が取れ、建物が見えてきました。本日は外部フェンスの鉄筋設置工事。T邸はコストが厳しい計画ですが、様々な新たなチャレンジを建主と共に実施しています。フェンスは鉄筋を鳥の巣上に配置し、ツタ棚として目隠し効果を狙います。鉄筋は敢えて錆びさせますが、充分に太い物を使用することで耐久性を確保しています。見栄えの良い様に配筋を検討し重なり具合も調整しました。極めてローコストで意匠上もCoolなフェンスが出来上がります。

2009年10月19日月曜日

松井田S邸 リフォーム 竣工写真01

昭和38年に新築された建物の断熱+内外装の改修工事。外壁、天井を剥がし厚い断熱材を入れ、土間にコンクリートを打設し外側基礎断熱とし、床・壁・天井を新たに設置。さらに、開口部ガラスを全てペアガラスに変更し、床下には蓄熱型暖房機を設置している。風呂・洗面・トイレも新しくし、アプローチからバリアフリー化を実施しました。予算的に厳しい条件でも、建主様の努力でどうにか形となり全貌が現れて来ました。徐々に工事状況をUPしたいと思います。宜しく御願いします。
トイレと一体となった洗面・脱衣室。トイレ・洗面。風呂の水回りは寝室及び廊下側から出入り出来、高齢の御施主様に使いやすい形状になっています。手摺を随所に配置し、明るく暖かく、快適な水回り空間としています。
廊下:既存のトップサイドライトを活かし、美しく蘇った各室。左開口部上部には、新たに梁を増設しています。

2009年10月17日土曜日

T邸新築工事 外断熱工事


外断熱の様子。屋根・外壁・基礎共に外断熱仕様としています。屋根外断熱は庇を設けると2重垂木となってしまうため、T邸では庇を設けず1重垂木として外壁側断熱材と一体化としています。

注意すべきは、一部庇が出ている部分。垂木を一体化せず断熱材のために縁を切り、方立で支える構造としています。また、この部分は通気を取りながら入念にウレタン発泡材で隙間を塞ぎ気密を取っています。外断熱は各所この様な綿密な施工チェックが必要で、他社がきちんと施工確認しているか疑問です。

情報箱 始めます。

建築に関する情報を厳選しオープンネットワーク化します。建築中の現場写真から、科学的知見による、耐久性や構造、エネルギー、使い勝手など、様々な確信を書きつづり、より完成度の高い建築を目指すための情報箱にします。

2009年8月19日水曜日

T邸 床仕上


T邸の床は、MDF仕上です。厚いMDFをSUS皿ビスで丁寧に土台に止め付けており、構造的に強くすると共に、この事で大幅なコストダウンに成功しています。耐水性の問題を検討し尽くしての決断ですが、ビスの留め方、外周部の納め、仕上げ塗料等、普通でない材料は様々な打ち合わせが必要で、より良いものになる様検討し続けています。

2009年8月4日火曜日

T邸 垂木


大きなスパンを細かなピッチの垂木で支える構造としています。外断熱工法の利点を生かして、垂木が細かな格子の様に見える様工夫しています。材料自体は安価なものですが、出来るだけシンプルな架構で、見え方の美しい方法を日々検討しています。

次世代省エネ基準に沿ったよりよい断熱材。コストを抑えつつより一層の消音化を狙った工夫や、屋根通気工法の実践等、小さな技術の積み重ねが、良い家の条件であると信じています。この様な小さな工夫をアピールするべく、このブログを立ち上げました。良く御確認頂ければと思います。

T邸 建方工事


T邸建方工事風景です。プレカット施工図確認の後、現場での各所及び金物関係を確認します。写真は一部風呂場部分で、防湿・水のための立ち上がり部分です。土台は全て気密パッキン付桧特一等材、金物も各部チェックして万全です。

2009年7月5日日曜日

T邸 地鎮祭


T邸地鎮祭の様子。これから工事が始まります。
(これから工事中写真を案件別にUPして行きます。宜しく御願いします。)

2009年7月4日土曜日

基礎断熱

最近世間でも主流になりつつある基礎断熱詳細図です。当社は13年前から原則この方式での計画を実施しています。OMソーラーの流れを汲むこの考え方は気密断熱に有利で、床下が乾燥し、耐久性が格段に上がります。次世代省エネ基準や、防虫防蟻対策等様々にノウハウを蓄積しています。配筋も各建物で算定し、より強固になる様に計画します。コンクリート設計強度は24KN。一般値より1ランクUPが標準としています。もちろん気密施工としてパッキン材を挿入します。